クリニック開業のための診療時間設定ガイド

ここでは、診療時間の設計に加え、実際の運営現場での傾向や成功事例を交えながら、診療時間設定の考え方とチェックポイントをご紹介します。

なぜ診療時間の設計が重要なのか？

診療時間は、「どのようなクリニックになるか」を左右する根本的な設計要素です。時間の組み立て方ひとつで、患者満足度・スタッフ定着・経営効率に大きな差が生まれます。

通いやすい時間に診療が行われていなければ、初診・再診ともにリピート率は下がります。たとえば、勤労世代が多い地域で夕方診療がないと、患者の流出につながります。

長時間勤務や不規則なシフトは、離職や採用難につながります。スタッフが安心して働ける時間設計は、良い医療提供の基盤です。

収益性の高い時間帯や、無駄の多い時間帯を把握して診療時間を調整することで、黒字経営を目指す土台を築けます。

開業医における一般的な診療時間は、以下のような2部制が主流です。

午前診療：9:00〜12:30

午後診療：14:30〜18:00（または18:30）

この形が多い理由には、「昼の訪問看護」「検査時間の確保」「スタッフの休憩」などが挙げられます。

患者ニーズの高い土曜日は、午前診療のみを行うクリニックが多く、平日通院できない方の重要な受け皿になっています。

都市部では、競争力の差別化として「19時まで」「20時まで」の夜間診療を設ける医院もありますが、人員確保や安全面への配慮も必要です。

診療科によって適切な時間帯や患者層が異なるため、診療時間の設計にも工夫が求められます。

診療時間を設定する際は、以下のような視点を事前に確認しておくと良いでしょう。

診療時間の効率化には、ITシステムの導入も効果的です。

これらの取り組みは、診療時間の「量」ではなく「質」を高め、より多くの患者満足と業務効率につながります。

診療時間は開業後も変更可能です。変更時には、以下の対応を忘れずに行いましょう。

診療時間の変更は、患者満足度や収益改善の面で大きな効果を生むことがありますが、十分な検討と周知が必要です。

診療時間の設定は、ただの「時間割」ではありません。患者ニーズや医療の質、スタッフの継続勤務、経営安定性といった複数の要素を統合した「経営戦略」そのものです。

クリニックの理念や診療スタイルに合った診療時間を設計し、必要であれば柔軟に見直しながら、地域で長く選ばれるクリニックづくりを目指しましょう。