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クリニックにおける医業承継とは

政宗の名言
ナビゲータ:政宗Dr.
仙台のクリニック開業専門家:政宗

仙台といえばこの私。この世で一番仙台に詳しい私が、開業を考えているDr.のためにクリニック開業について猛勉強したんだ。

クリニックや医院を承継(継承)する「医業継承」を行うにあたり、タイミングやコストに加え、それぞれのケースによる承継の種類についても確認しておこう。このページでは、医業承継の種類やメリット・デメリットをまとめた。

医業承継とは

医業承継とは、現在進行形で経営されている医院・クリニックを引き継いで運営していくことを言います。M&Aの医業版というイメージであり、医業承継を行うことによって譲渡側は自分のタイミングで医業を退くことができ、承継側はコストを抑えてそのまま医業を運営していくことができます。

患者や医師・スタッフをそのまま受け継いで運営できるのが医業承継のメリットですが、一方で理念や価値観の相違がデメリットとして考えられています。

なぜ医業承継を考える必要があるのか

現在、少子高齢化によって医師の高齢化や後継者問題が医業承継として医療業界の大きな課題となっています。医療機関の経営者は当然医師である必要がありますが、医師不足の日本では後継者の確保が、他の業種と比較しても厳しい状況となっています。

医業承継が難しいという理由で休業・廃業を余儀なくされる医院も少なくはありません。結果として小規模病院の解体が進んでいき、最終的には地方から医療機関が撤退するリスクまで考えられます。

医業承継の種類

医業承継の方法は、承継する側・される側の関係性によって大きく3つの種類に分類されます。

親族承継

医業承継で最もポピュラーなのが、引退する院長の息子や娘などの親族に引き継がせる「親族承継」です。個人のクリニックや医院を親子間で相続することもあり、その場合はさらに「生前の医業承継」「相続の医業承継」に分類されます。

生前の医業承継は譲る側の親がまだ生きている内に承継する方法で、贈与として行われます。相続の医業承継は譲る側の親が亡くなった後の承継方法で、相続財産として行われます。もちろん子ども以外の親族にも承継することが可能です。

第三者承継

後継者不足の日本で、現在増えつつあるケースが第三者承継です。承継する側・される側に親族関係がなく、お互いに相手を探すことで承継が成り立ちます。医業承継の仲介会社や専門家などを通して相手を探すことが多く見られます。

後継者不足を解消するのに効果的な方法ですが、譲渡側・承継側の間で医院を運営していく上での意見のすり合わせが必要です。また、医院を売却・貸付する金銭的なやり取りが発生するのも特徴の一つです。

医療法人の承継

譲渡する側のクリニックが医療法人の場合には、経営者(理事長、理事)などを交代することによって医業承継が行われます。法人化していない個人のクリニックや医院の場合と手続きはそれほど変わりませんが、2018年3月31日以前に設立された医療法人の場合は、出資者が保有する出資持分の承継手続きもあわせて行う必要があります。

2018年以降に設立された医療法人については、出資持分がなくなって拠出型となっているため特別な手続きは必要ありません。

親族間で承継するメリット・デメリット

子どもや甥・姪、孫など…親族に医院やクリニックを譲渡する方法のメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

親族間の承継なら、引き継いだ患者やスタッフとの信頼関係も構築しやすいでしょう。医業は患者やスタッフとの信頼関係が重要ですから、スタッフの退職や患者の転院などを防ぐ上では経営者が親族に引き継がれた方が良いこともあります。

また、信頼関係があれば承継前の研修・引き継ぎもスムーズに行えます。各種引き継ぎが円滑に進めば進むほど、研修に十分な時間を割けるため経営者が若い内からでも医院を運営していくことができるでしょう。

デメリット

親族に継承する上でトラブルになりやすい点として、運営方針の相違があげられます。承継する側が全経営者の方針を改変したいと考えていた場合、承継後にスタッフが離れていってしまうケースがあります。

スタッフが離れたり経営方針が変わったりすると、患者からも不信を抱かれてしまいます。スタッフ離れが患者離れにも繋がってしまうため、事前に親族間で意識をすり合わせて、承継後の経営についてしっかり話し合っておく必要があります。

第三者間で承継するメリット・デメリット

親族間ではなく、他人である第三者に医院やクリニックを譲渡する場合のメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

第三者から医業承継するメリットとして、既存の患者と医院をそのまま担当できる点があげられます。新規で開業するとなると、新たに患者との信頼関係を築いていったり、スタッフを募集したりと多くのコスト・時間がかかります。事業承継すれば最初から安定した経営体制で運営していけるでしょう。

スタッフ側からも、医院が承継されれば廃業にならずに済むため生活の安定に繋がります。実務経験の培われたスタッフを継続雇用できれば、後継者側も安心して医院を運営していけます。

デメリット

親族間での承継と同じく、医院に対する考え方や方針に相違があれば承継後のトラブルに繋がります。特に第三者間での承継となると、話し合いが上手くいかず承継後に大きく方針が変わってしまうこともあります。

患者に対する向き合い方はもちろん、スタッフの扱い方など…経営者の方針が変わるだけで院内の雰囲気は大きく変化します。あまりに承継後の変化が大きい場合は、患者やスタッフとの信頼関係が崩れてしまい、退職や患者離れのリスクが高まるでしょう。

医業承継の際におこりやすいトラブル

医業承継はお互いの信頼関係が構築されていないとトラブルが発生する場合もあります。ここからは、医業承継の際におこりやすいトラブルについて見ていきましょう。

経営理念や診察方法の擦り合わせが不十分

前任者と後継者の間で経営理念や診察方法の擦り合わせが不十分の場合、認識の相違が生まれることがあります。認識が異なっているまま診療を続けると、スタッフとの信頼関係を上手に築けないといったトラブルが発生するケースも。

スタッフに十分な説明や合意を得ていないと、反発を招いて従業員の離職などのトラブルに繋がる可能性も出てきます。また、これまで医院の診療方法を信頼してくれた患者さんからも不信感が生まれ、病院の評判にも影響しかねません。

経営方針が大きく変わる

継承者にやる気があればあるほど、自分なりの経営方針を実現しようとします。しかし、スタッフの中にはやり慣れた業務や組織が変わることを嫌がる人も。特に前任者との間の信頼関係が強く築かれていれば、経営方針の変更に対しよる強い心理的抵抗を覚えるでしょう。

経営方針が大きく変わり、それを押し通そうとすると反発を招いてしまうかもしれません。これまで医院を支えてくれたのはスタッフ陣であることを十分理解し、医院が長い間大切にしてきた方針に対しても十分配慮することが大切です。

医業承継を事前に周知できていない

急な継承などで医業承継を事前に周知できていない場合には、何らかのトラブルを引き起こす可能性があります。院長や経営陣が急に交代すると、長年通院していた患者は医院の体制について不信感が募ってしまい、患者離れの原因になるでしょう。

患者に安心して快く通院してもらうためにも、医業承継する際は事前にきちんとした説明が必要です。

医業承継を成功させるためのポイント

では、医業継承を成功させるためには何を気を付ければよいのでしょうか。医業継承を成功させるためのポイントについて紹介します。

医業承継(M&A)の専門家に相談する

医業承継は、医院が個人か法人かで手続き方法が異なります。この手続きは非常に複雑で、税務や会計、法務などの知識は必須です。不備があると開業できない場合もあることから、医業継承の手続きをする場合は医業承継(M&A)の専門家に相談するようにしましょう。

M&Aをコンサルティングしてくれる会社に相談・依頼すれば、医業承継がスムーズに進みます。重要事項に関する書類を漏れなく残してくれるため、リスクマネジメントにもつながるでしょう。

早くから準備を進めておく

医業承継を行う場合、なるべく早くから準備を進めておくようにしましょう。たとえば、医院の業績が悪化してから継承準備を始めても、経営状態が芳しくない医院の後継者候補は見つかりにくいです。また、事前周知のない急な院長交代は、スタッフや患者さんにマイナスイメージを与えてしまうでしょう。

余裕を持って準備を進める上でも、継承が必要なタイミングより早く業者を探し始めることをおすすめします。特に、高齢化が進んでたり地方だったりする場合は早めに準備するようにしましょう。

入念に認識の擦り合わせをおこなう

経営方針や診察方法の変更はトラブルが付きものです。医院に対し、これまで勤務していたスタッフや患者さんの不信感が募ってしまう可能性があります。トラブルを発生させないためにも、経営方針や診療方法について念入りに認識の擦り合わせをおこなうことが大切です。

院長と後継者の間で医院の経営方針や理念について話し合う時間を取り、時間をかけて話し合いましょう。価値観を共有することができれば、信頼関係も築くことができます。

まとめ

医業承継を成功させるためには、医院の理念や診察方法などについて譲渡側と承継側で齟齬がないよう念入りに話し合って認識を共有することが大切です。経営理念や診察方法の擦り合わせが不十分だったり、医業継承を事前に周知できていなかったりすると、トラブルに発展しかねません。

信頼できる専門家に医業継承のサポートを依頼することでトラブルを回避することができ、双方にとって納得のいく継承が実現しやすくなるでしょう。

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